紫のボールペン

体中のあちこちが痛い。
まるで過激な運動をしたあとみたいだ。
これはおとといの仕事の筋肉痛のようだ。
おとといの仕事は、たったりしゃがんだり、
急ぎ足になったり、誰もが結構きつかったようだ。


昨日の仕事はカタログなどの検品だった。
いろんな事があったが、私なりに楽しかった。
朝、9時に現場に入る。簡単な朝礼の後、経験者はすぐに
作業に入り、初めての人はプロのパートさんのところに配属された。
指導してくれたパートのおばさんはわたしより年配だった。
解らないところがあると自分の仕事の手をやすめ、指導していた。
わたしの仕事は、内職の人が貼り付けた製品の色見本の布
が正しい位置に綺麗に貼り付けてあるか確認する事、
サンプルを見ながら指差し確認する。
次に印刷の汚れやよれなども検品していく。
ひとどおり教えてもらったあとやってみたが
なんだかもたもたしてしまう。
そこを見ていたパートさんは、今度は紙の数え方、
並べ方、重ね方など基本的なことから教えてくれた。
次に不良品の処理、補給のしかた記帳のしかたなども、
教えてくれた。
私は聞き漏らさないよう一生懸命聞いていたつもりだったが、
いち工程が終わるたびに、そのつど解らなくなる。
一度聞いた事をもういちど詳しく説明してもらわなければならなかった。
そこまで、丁寧に教えてもらっても解らないことがいっぱいあった。
指導してくれたパートさんも、さすがに不安に思ったのか
年配のパートさんに目で訴えていた。一部始終をみていた
年配のパートさんは「大丈夫、大丈夫」と言っていた。
同じ初めてでも、個人差があるのだろう。
しばらくして、その倉庫の班長みたいな人(作業服の男)が来て
もう一度、数え方、点検のしかたのコツなどを教えてくれた。
二、四、六と数えるのではなく、5、10、15と数えたほうが速い
と言った。実際に目の前でやってみせてくれた。
無駄がない動きで、全ての工程を素早くやってみせた。
ものすごい速さなので驚く。
作業着の男が行った後、真似してやってみたがうまくいかない。
持ち方も反対のほうが持ちやすくどうやっても、二、四、六・・・
と偶数で数えたほうが数えやすい。
そのとき気になったのが、彼が帰ったあと、右と左が逆に
なったような気がした。つまり、検品前と検品後の位置。
どちらも100枚ぐらいの山ができている。
私の検品用の台が、左きき専用の台だったので
置き方は皆と逆である、しかし彼がまさか間違えるわけがない
だろうと思い、そのまま続けてやっていた。
このときちゃんと確かめるべきだった。

そうこうしながらもだんだんに自分にぴったりのやり方が
見つかり、要領よくできるようになってきた。
そこから一気に200枚検品できた。
スピードが出ると、やっていて気持ちよかった。
300枚を検品し終わり、箱に入れたところでお昼になった。

お昼は倉庫の外で道路脇に並んでたべた。
段差があってちょうど椅子になる。
18か20くらいの女の子達の隣に座った。
右側には50代位の人が座った。朝自転車で
やってきた人だ。「専属のかたですか?」と
聞いたら「今日が二日目」だと言った。
食べ終わってから、左にいる女の子達の話を聞いていた。
蛙だの、蟻だの、ゴキブリだのいろんな話して大笑いしていた。
私も一緒に笑った。

その話のなかでゴキブリの羽のところに
呼吸するところがあってそこに泡をつけると
呼吸できなくなって死ぬという話をしていた。
「え?そうだったの?」
シャンプーでも石鹸でも何でもいい、泡の出るものを
泡立ててそれをゴキブリの体に吹きかければいいわけだ。
飲み込ませるのと違って少量でも簡単にできる。
死因は洗剤を飲み込んだからではなく、呼吸困難。
初めて気がついた。
早速、ゴキブリの生態を調べてみようと思う。

いるかや、魚の奇形の話も何度も聞いたがあれの
本当の原因は何か?本当の所は調べられていないのでないか?
突然変異かもしれないし・・工業排水かもしれない。
NWやAWのように何でもかんでも家庭から出る日用品の有害性
にしてしまうのはおかしい。

その日はコンベンションでもらった名前入りの紫の
ボールペンを使っていたので、知っている人がいれば
私がNWDTである事気づかれたかもしれない。
   (おまえは隠れキリシタンか?)


昼から、慣れてきたせいか作業が面白いように
はかどった。もうひと箱もあっという間に終わる。
「やればできるじゃない」と自信が出てきた頃、
先ほど指導してくれた作業着の男が来た。
「もうちょっとスピードをあげて1時間にだいたい400枚を
めやすにやってください。」と言った。
ということは、私がわたされたトータル900枚は
午前中に終わっていなければならなかったのだ。
ますますスピードをあげて、どんどん検品していく。

 2時の休憩時間の少し前にまた作業服の男がやってきた。
「それが終わったら2階に上がってください。」
そういえば、お昼頃気分がわるくなって一人帰っていった。
あの、おばさんが私一人になってしまうと言っていた。
一番作業が遅い新人の私が彼女の代わりに選ばれたのか。
2階に行くのが楽しみで頑張ってやったが、全部終わったときは
2時半を回っていた。

そこで一番恐れていたことに気がついた。
数が全然あわないのだ。
全部で900枚あるので
300づつで3箱できるはずが125枚も足りない。
1枚や2枚ではない。100枚以上も違うのだ。
パートさんと原因をあれこれ考えていた。

そこへ作業服の男性がやって来た。
私を2階に案内する為だ。
数が合わない事を告げると、まず最初に
「きちんと数えた自信ありますか?」と聞かれた。
「はい」と答えたが、本当は自信がなかった。
確かにいちいち4回も数え直していたから間違えるはずがない。
ただ、さっき感じた違和感を思い出し、あれが原因かもしれないと
思った。不安ならば箱に入れる前に300枚あるかどうかもう一度
数えなおす必要があったのだ。
私は昔からめんどうくさくなると勘で判断する癖があって、
とんでもない間違いをしでかすことがある。
以前4年間働いたパートの職場でもそういうことがあった。

男性が、新しいほうの箱をざっと見てくれたが、大丈夫そうだった。
しかし、怪しいのはもうひとつの箱のほうである。
もうひとつの箱のほうも開けてみようとしたら、止められた。
「自信があるなら、もういいです」といわれた。
もう一度数えなおすような無駄なことはしないでほしいと
いうのが彼の言い分。
そして、足りなかった分の125枚はもしかしたら誰かが取り出した
のかもしれないというのだ。
そんなことはありえないと思いながら、しばし、みんな狐につつまれた
ような顔をしていた。
棚に入れておいた牡丹餅がなくなった時、頭の黒いねずみの
せいにする。あれとおんなじかなあと思った。
頭の黒いねずみはいったい誰なのか?
謎をのこしたまま、わたしはそのまま2階に行くことになった。
「後で見直しておいて・・・」と私を指導してくれた
先輩のパートさんに作業服の男が言っていた。
なんだ、結局彼も私の数え間違いと思ってるじゃないかと、とっさに
判断した私は、「どうもすみませんでした」と小さな声で謝ったが、
手取り足取り教えてくれた年配のパートさんの目を見ることができなかった。
結果はすぐわかるだろう。私はそれを確認できない。


嫌な思い引きずって、2階にあがった。
ひどい暑さでむっとした。
お昼に隣にいたおばさんが一生懸命一人で
作業していた。
20センチくらいの長さで、2ミリぐらい薄さのプラスチックの板を
専用の板にはさんでコの字のように折り曲げる仕事だった。
折り曲げたら数えて箱に詰めて完了である。
えー、これも数えるの?あちこちに計算しているメモ書きがあった。
一瞬新たな不安がよぎった。しかしやらなければならない。
力がないと折り曲がらないのでやっているうちに汗が吹き出てきた。
隣のあの50代ぐらいの女性。
まだ2日目だというのに、ものすごい速さで折り曲げていく。
多分私の3倍くらいの速さだと思う。
いろんなプレッシャーと、安堵感が入り混じった複雑な気持ちで
2時間ほどその作業をもくもくとやった。

途中で先ほど指導してくれた若い青年がやってきて
もうちょっとスピードあげてくださいと言った。
「あの隣の人みたいに・・・」
む、無理、と思ったが「はい」と答えた。
それから5時まで一生懸命頑張った。
折りながら重ねていく、100個貯まったら今度は
バンバンに箱に入れていく、箱は大きさがバラバラで
入る分だけ詰め込んでいく。確認もせず箱をしめて
テープで閉じる。なるほどこれなら私でもできる。

終礼のチャイム。

帰りのバスで、この2日間同じ現場だった女性と
話した。名前も自然に覚えた。何度も同じ場所に派遣されると
年齢や能力に関係なく仲間達と自然に仲良くなってくる。
それが結構わたし的には嬉しかったりする。
黒に近い灰色の空を見ながら、この職場にはもう2度と
配属されないだろうなと思ったけど、検品の仕事は
面白かった。


家に帰るとみんなが
お手伝いをしてくれて助かった。
次女がご飯を炊き、魚を焼く。
三女がサラダを作り、味噌汁を作る。

おなかいっぱいになったら、急に
眠気が襲ってきて、その場で寝てしまった。





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